2013年10月22日火曜日

チタンマフラーを作る GROM編

チタンシリーズの3部作はマニアな内容でしたね。
ついでにもう一つおまけでマフラーの製造現場からお届けです。

今、GROMのフルチタンマフラーを作っています。

GROM チタンマフラー

かなり凝り過ぎた設計のために時間が掛かってます。
サイレンサーは車体の内側に寄せてますので、ノーマルのリヤフェンダーは使いません。

あの今風の大きなリヤフェンダーは簡単に取れるようになってます。
普通はプラスチックのフェンダーを切り取ったりなどフェンダーレスにするのは大変でしたけどGROMの設計者はエライ。

フェンダーとナンバーブラケット部分がユニットされてて、ごっそり簡単に取れるようになっているんですね。
カスタムする時、すごく有難い設計です。

フエンダーユニット外してもの違和感がないようになってます。
この部分を設計した人、バイクの事が分かってらっしゃるです。

そんなGROMですからフェンダーユニットを外して、サイレンサー部分を車体の内側に収めてしまおうというのがランポートスタイルでしょうか。

もちろんナンバーステーは別に必要ですけどね。
ナンバーステーをシンプルにカッコ良くしたいので若干悩み中でもあります。
ナンバーステーをチタンで作ってしまおうかな・・・

来週は台風が心配ですけどテスト走行までこぎつけたいですね。

GROM チタンマフラー

GROM チタンマフラー

GROM チタンマフラー

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2013年10月19日土曜日

チタンを磨く

チタンシリーズ3日連続です。

今日はリクエストにお答えして、チタンを磨くいうお題。

今日は皆様方にお馴染みのチタンマフラー。傷が付いた場合はどうしましょ、という事で興味のある人はお付き合いください。

チタンは大好きな金属ですが加工が難しい。
切るにしても、溶接するにしても、磨くことも簡単ではありません。

高価なチタンで出来たサイレンサーが傷つくとガックリきます。
何とか元に戻す方法はないか、考えてみましょう。

バイクのサイレンサーに使われているチタンは非常に薄いです。
おそらく0.6ミリを使ってる場合が多いと思います。

0.6ミリは薄いですよー
鉄とかアルミでサイレンサーを作った場合、指で押すとへこむはずです。

チタンは強いので薄くても平気。
というより、これ以上厚く出来ないんですね。

マフラーメーカーがサイレンサーを作るとき板を切断し、それを丸めて接合部を溶接します。
例えばステンレスなら0.6ミリとか0.8ミリとかの板で作るとします。

板を丸めるのに3本ローラーという機械で丸くします。

普通に接合部分が合うように丸くできるんですが、チタンの場合は丸くできないんです。

0.8ミリのチタンでサイレンサーを作ろうとしても丸く出来ないんですね。

チタンという金属はバネと同じなんですね。
バネって曲げたり伸ばしたりすると元に戻りますよね。

アルミとか鉄とかは曲げると曲がったままです。
ステンレスはもう少しバネの要素がありますが、バネよりは普通に曲がってしまいます。

ところがチタンは全くのバネそのもののように曲げても元に戻ってしまいます。
0.8ミリのチタン板でサイレンサー作ろうとしてもある程度は丸くなるけど丸にはならない。

それだけ頑張っても丸にするのは不可能です。
これは経験済みの失敗談です。

板厚を薄くすると何とか丸には出来ますが薄くて溶接が難しいです。

どのマフラーメーカーもチタンやり出した時は苦労したはずです。

そんな極薄サイレンサーに傷が付くと困ります。
傷の深さが0.1ミリなら0.1ミリ削ればいい。

0.2ミリとか0.3ミリとかの場合は残りの板圧が薄すぎてしまいます。
流石に強いチタンといえども厳しい板厚ですね。

もし0.1ミリの深さの傷だとして傷を無くそうと思うと傷の周辺を0.1ミリ削り取らないといけません。

何の道具で削ればいいのか。

電動サンダーではどうか。
細かめのサンダー砥石でなら大丈夫かもという気がしますが絶対にサンダー使ってはいけません。
一瞬にして花火のように燃え尽きてしまいます。

チタンは熱を一定以上加えると燃えてしまうし、変色してしまいます。
サイレンサーとしては磨いた所が変色してたら致命的ですよね。
ちなみに一度変色すると元には戻りません。

最近、サンダーの砥石でゴムで出来てるのがあります。
一枚2000円ぐらいするんですが、アルミなんか磨くと目詰まりせず大変優秀なサンダー砥石です。

それならチタンも磨けるのではないかと実験してみました。
これも熱を帯びるだけで一向に削れません。

ゴム砥石の番手を替えて、回転数を替えてももだめ。
メーカーに問い合わせると一度伺いたいということで、ゴム砥石メーカーの人に来てもらいました。
結果は全くチタンには太刀打ち出来ずでした。

チタンの特徴で熱伝導が低いというのがあります。
熱が伝わりにくいと言う事は熱がこもりやすい。
チタンを加工する時は熱に注意です。

それでは傷ついたサイレンサーを磨くのにはどんな方法があるのかですね。

唯一の方法はサンドペーパーに水を付けながら磨くです。
チタンは強いとは言っも意外と柔らかいんです。

水で冷やしながら、サンドペーパーも目詰まりも水で流しながらであれば0.1ミリの傷なら落とす事は可能です。

サンドペーパーは400番くらいから初めて800番手くらいまで仕上げます。

延々と1500番手くらいまで磨いてもペーパー傷は消せませんから無理をせず、バフ研磨で仕上げます。

一般の人はバフ機など持ってないでしょうけど、ドリルとかに付けるバフもありますからバフ研磨が早いでしょうね。

もちろん手でコンパウンド付けて磨く方法もありますけど時間が掛かるでしょう。

とりあえず小さくてもバフで磨くとして、大事な注意事項があります。

チタンは熱伝導しにくい、と言う事はバフの熱も上がりやすい。
頑張ってバフ掛けるとすぐに温度が上がり変色します。

いちいちチタンって手強いですね。

バフの研磨材はステンレス用の白棒である程度磨けます。

ランポートではチタン用に配合された研磨材で磨いたりしますが、チタン用の研磨剤は一般には手に入りにくいかもしれません。

手、又はバフである程度磨けたとします。
光沢が出るまで磨きたいのですが、ここで限界がきます。

それ以上の光沢はバフ屋さんの仕事でしょうね。
チタンが扱えるバフ屋さんも少ないです。

光沢を出すのは、ある程度妥協しましょうね。
バフ目とか磨き目を一定方向に揃えると、極小の細かいキズが残っても違和感ないはずです。

今日は画像が無い割に文章長いですね。
ついでなのでもう少しご辛抱ぐださい。

チタンを磨いていってもあることに気が付きます。

結構磨いてるはずなのにツルツルにならない。
何かチタンの表面がスベスベしない気がする。
そんな風に感じるかもしれません。

ここでも又チタンの特徴が現れます。
チタンのパイプとか板とかの表面は顕微鏡レベルで見るとザラザラなんです。

チタンの表面は霜柱状と言って、霜柱がギザギザに立っている状態なんです。
ですからいくら磨いても指が滑るようなツルツルにはなりません。
そんなザラザラの表面がツルツルになる場合があります。

それは溶接した時に現れます。

溶接したビードの部分は溶けて再結晶してツルツルになるんですね。
チタンマフラーの溶接を虫眼鏡で見ると結晶みたいになってて綺麗ですよ。

最後にチタンマフラーのお手入れ方法に移ります。

チタンマフラーをコンパウンドとかワックスで磨いたとします。
たぶん汚い色になっています。

チタン表面のザラザラでしたよね。
ですかにワックスとか汚れが入り込んでいて汚いんです。

チタンマフラーにワックス使ってはいけません。

脱脂洗浄材でもいいんですけど一番簡単でキレイになるのが台所用の洗剤です。

油汚れが良く落ちるのありますよね。
あれが一番キレイになります。

スポンジに洗剤付けて水で流しながらチタンサイレンサーを洗います。

汚れが落ちるとチタン表面が水を弾くようになって、サイレンサーの着色が鮮やかに浮かび上がります。
キレイですよ。

その後は何も付けずにが鉄則です。
チタンの表面にある酸化皮膜が新鮮な空気と触れている状態が最もチタンに優しい状態です。

今日は長文でしたね。
毎日ブログのネタを何にしようか悩む時あるんですか、お題をリクエストしていただけるとホント助かります。

ランポート

2013年10月18日金曜日

チタンを溶接する




前回ではチタンを削るでした。

今日のお話はチタンを溶接するです。

チタンという特殊金属を製品として使うのはバイク業界が早かったのではないでしょうか。

チタンのパイプは普通には売ってなかったでしょうし、1ミリ厚で25パイとか32パイなどバイクのマフラー以外で使うことはないでしょう。

大手マフラーメーカーが薄肉チタンパイプを製鉄会社にオーダーしてくれたおかげで、我々にもチタンパイプが入手できるようになりました。

最初にオーダーした所は相当な金額がかかったはずです。
有難い事です。

バイクのマフラーではチタンパイプの厚みは通常1ミリを使います。
ステンレスの場合は1.2ミリが標準です。
チタンの比重が4.51でステンレスが7.9です。

チタンマフラーはステンレスのマフラーと重さを比較すると、薄く出来るという事もあり0.47倍です。
半分以下ですね。

そんなマフラー向きみたいなチタンですけど意外とマフラーに向いてる訳ではないんですね。

チタンは耐熱金属ではないので、ある程度の温度になるとクニャクニャ曲がり出します。

F1のマフラーは耐熱金属のインコネルという金属を使ってます。
もしチタンで作った場合すぐに燃え尽きてしまうはずです。

バイクの場合はマフラーが外気にさらされるので、そこまでの温度にはなりません。
モトGPのマフラーはチタンで出来ていて、画像を見るともうダメだという温度にはなってないようです。

チタンがどれぐらいの温度になったのかは色で簡単に分かるんです。

最初は茶色から始まるんです。
そして赤っぽくなっていき青が出てきます。

チタンらしい色ですね。

それから温度が上がると青が白っぽくなっていきます。

そこら辺がチタンの限界温度で、それ以上温度が上がると白からコゲ茶色になり終了です。

チタンを溶接するには色に注意します。
当然、溶ける温度にして溶接する訳ですから強度を落とさないようにしなければいけません。

温度が高い時に少しでも空気に触れると酸化します。
アルゴンガスで空気を遮断しながら溶接します。

溶接トーチを動かしていくと、まだ熱い部分がアルゴンガスから外れて酸化していきます。

ですからアルゴンガスはトーチと、トーチから外れた箇所とパイプ内部に行き渡るようにします。

溶接自体は難しくは無いんですが、アルゴンガスで空気を遮断するのに手間が一番かかる金属なんです。

薄い青ぐらいならマフラーとしては問題ないのですが、白やコゲ茶まで変化してしまうと使い物になりません。

マフラーにバーナーで色付けたりしますけど青もしくは青白までが限界。
レーサーのマフラーの色でどれ位温度が上がっているのか見てみると面白いですよ。

溶接箇所は温度が上がって結晶が変化してるので白のままで変化しません。
どこで溶接してあるのかすぐに判ります。

ちなみに鉄の場合は高価なアルゴンガスではなくて炭酸ガスで大丈夫です。
ガスがあまり当たってなくても表面が黒くなるだけ。

鈴鹿ではチタン溶接の名人が多いです。
神の溶接する人、世界的に言っても鈴鹿に集中してるような気がします。

そんな神の溶接する人、レベルが極めて高い人が多いのですが、一般的には知られていません。

そういう人たちはメーカーとか下請けで黙々と仕事してて、自分の溶接をブログに書いたりしないので知られてなんですね。

自分もそんな神の領域に行きたいですね。
たまに仏の領域かな? と思うことあるけど勘違いでしょう。

溶接の世界は奥が深いです。





ランポート