シリンダーボーリングが出来上がってきてエンジンの組み立て完了。
車体に搭載します。
スポーツカブには面白い機構あり。キャブにオイル通路が付いているんです。
エンジンオイルの熱でキャブを温める機構です。まあ必要ないとも言えますが、当時のホンダは色々とやっています。
ポイントは調整してあったので問題なくエンジン始動しました。
焼けたオイルの匂い。不思議な事にオイルは新品なんですけどね、ノスタルジックな匂いが工場内に立ち込めます。
ある程度回転が安定したらオイルがヘッド側に送られてるか点検します。
オイルポンプのような機構が付いてはいてもギアポンプやトロコイドポンプではない原始的なオイルポンプですからね。ちゃんとオイルが送れてるのか心配です。
ヘッドカバーキャップを開けると・・・何とオイルが来てない。組み間違いは無いはずなので慌ててはいけません。
水ポンプと同じように呼び水というか呼びオイルが必要なのではないかと推測します。
オイル通路をヘッド側、最終段階のところで外して負圧で吸い込んでみます。そしたらオイルが出てくる。
回転に比例してちょびちょび出てくるのを確認できました。
昔のエンジンの組み立てにはコツがいるみたいですね。
ちょっと危なかったけど、これにて完成でとなりました。
50年以上前のホンダ、カブエンジンをオーバーホールして感じたこと。これ現代でも通用するのではないか? という気がします。
もちろん各部設計の旧さはあります。
パーツ類、電装類など現代の物を使うとして設計し直したら、OHVエンジンは現代で通用するのか?
究極のOHVカブエンジンを今新に設計するしたらどんな設計になるのか。
考察してみましょう。
まずOHVエンジンの欠点として高回転に対応しないという事があります。
OHCと較べてプッシュロッドとリフターが余分ですから、慣性重量が増えてバルブサージングが起きやすい、というのが高回転に向かないという理由です。
これはエンジンの常識とされているけど果たして本当にそうなのか。
スポーツカブのエンジンに当てはめると、実はそうではないのかと思えます。何しろカタログで5馬力もあり9500回転のスペックエンジンですから、OHVが高回転に向いてないということは当てはまりません。何の問題も無いですね。
ストロークは約40ミリ、ストロークが短いとピストンスピードの点で言っても高回転まで回せる事ができます。
実はカブエンジンのストロークはF1とほぼ同じで、CBR250 4気筒エンジンもほぼ同じストロークです。
高回転型のハイパワーエンジンはボアが違うだけで、ストローク40ミリくらいが定番の寸法と言えます。
2万回転ぐらいまで回そうと思うとカムギアトレインは必須です。OHVカブの場合は一応ですがカムギアトレインなんですね。
まあプッシュロッドとロッカーアームがあるので2万回転は回せませんけど、1万回以上回れば実用上問題ないでしょう。
エンジンの進化としてはサイドバルブからOHV OHC DOHC となるわけで、OHVというのは昔の技術と思ってました。
でも意外とそうでは無いのではないか、と思えてきました。技術者は常識にとらわれてはいけません。
今の技術で高性能OHVを設計するとどうなるのか。
プッシュロッドはチタンでしょう。50年前はチタンが一般的ではありませんでしたが、今では普通に入手できます。
昔のOHVカブのプッシュロッドは充分すぎるぐらい軽い優秀な設計です。
あえてチタンにする必要もないんですけど、究極のOHVエンジン、15000回転を目標にする場合にはチタンは必要でしょうね。
カムとプッシュロッドの間にあるのがリフターです。カムから直接プッシュロッドを押せませんから、小さいピストンみたいなパーツを介してプッシュロッドを押す仕掛けです。
DOHCでもリフターはあり、かなり軽く出来てきてるので究極のOHVカブの場合も軽くはできると思います。
オイルポンプはどうか昔のOHCカブはクランクケース内のオイルをコンロッドで描き上げて潤滑。ロツカーアームへのオイルはごく少量をヘッド側に送るというのが昔のエンジンです。
ロッカーアーム側にオイルを送りすぎてもステムシールの無いバルブからオイル消費するでしょうし、少量のオイルを送るのがむしろ正しい設計です。
今の技術では細い軸のバルブにステムシール付きですね。
潤滑はロッカーアーム周りだけでいいのでオイルは少量で構わなんですけど、ハイパワーエンジンの場合オイルでの冷却効果も持たせたくなります。エキゾーストのステムをオイルで冷やしたいですからね。
そんな事もあってオイルポンプは普通のトロコイドを付けた方がいいでしょう。増えたオイル量でクランク側とヘッドにオイルを充分に行き渡らせます。
燃焼室は半球形を止めてコンパクトにします。半球形で圧縮上げようとするピストンヘッドが盛り上がる必要があります。
昔のバイクエンジンはすべてこんな形式です。
半球形とういのはバルブ面積を増やすという理由では有利ですけど燃焼効率から見るとよろしくないです。
現代のエンジンは4バルブペントルーフ型燃焼室が定番です。これは燃焼効率がいいので普通のファミリーカーでも使われてます。今の車は燃費が大事ですから燃焼効率が良いエンジンが定番になって当然ですね。
究極のOHVカブエンジンの場合も4バルブ、ペントルーフ型燃焼室にするとしましょう。
ハイパワーという理由でDOHCにする必要は無いですね。
OHVの場合カムは一個でいいので、インレットとエキゾーストのロッカーアームがバルブを2本押す形状にすればいいんです。
一つのロッカーアームで2本のバルブを押す方法は、現代のエンジンでも普通に使われていて目新しい方法でもありません。
ただ違うのはプッシュロッドが有るというだけです。
むしろツインカムより良いかもしれない。ツインカムでもカムはチエーンで駆動が今時のエンジンです。
OHVの場合はカムチェーンが存在しないカムギアトレインですから、バルブサージングする回転以内であれば全くもって正確にバルブの閉会が出来てしまいます。
何だか戦闘能力の高いエンジンが見えてきました。
次に燃費という観点から見てOHVはどうでしょうか。
燃焼効率が同じだとして燃費を左右するのはエンジンの内部抵抗です。カムチェーンが無い分OHVの方が内部抵抗少ないですね。
DOHCの場合ではカムがリフターを摺動する時の摩擦抵抗は大きいです。
今時のエンジンはカムとバルブの間にロッカーアームをあえて入れてる場合が多いです。
ロッカーアームにはローラーが付けてあって摩擦が少なくなるので、重量が若干増加しても燃費の点で有利だという理由からです。
究極のOHVカブエンジンの場合はどうでしょうか。これもリフターにローラー付けるだけだから簡単です。
次にOHVの欠点であるバルブクリアランスの問題。
エンジンが熱を帯びると膨張します。バルブクリアランスはエンジンの温度によって絶えず変化してます。
クリアランスは圧縮を保つ必要から必ず必要なのですが、クリアランスが多くなる状況ではカタカタと音が出ます。
一般的にはエンジン始動後にエキゾーストバルブが最初に伸びるので、その時にクリアランスが少しだけ残る状態に調整します。
エンジンが暖気するとバルブの伸びに遅れてシリンダーも伸び出します。そこでクリアランスが増えます。
冷機時にバルブクリアランスを少なく調整してしまうとエンジン掛けてから調子が悪くなるという症状になりますのでバルブクリアランスの調整は重要です。
思いっきり寒くなってもバルブクリアランスが少なくなって始動困難なエンジンもあります。
エンジンの形状によっては冷えてバルブクリアランスが無くなる場合もあるからです。
バルブクリアランスは重要なエンジンにとって実に重要な要素です。
OHVエンジンの場合長いプッシュロッドが伸びるのでOHCよりクリアランス的に難しくなります。それがOHVの致命的な欠点しなります。
OHCの場合もカムチエーンが伸びますけど、カムの操作角度が少し違うだけでバルブクリアランスには影響しません。
これはOHVとOHCの決定的な違いになります。
やはり究極のOHVカブエンジンは無理なのでしょうか。
しかし、そうでも無い気がします。
何事も常識に常識にとらわれてはいけません。
カブエンジンのストロークは約40ミリ。
短いですね。
それに応じてプッシュロッドも短いんです。短いということは伸びる量も少ない。
ロッカーアームとプッシュロッドの材質と形状。それを煮詰めると、エンジンの熱でバルブクリアランスが変化する現象を少なく出来るような気がします。
むしろプッシュロッドのおかげでクリアランスが有利に働く設計ができるのではないでしょうか。
究極のOHVカブエンジンの概要がそこまで見えてきましたね。
こんなエンジンを作ってみたいです。
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